アメリカ・北米お住まい拝見-地下室付住宅施工例-
タグ・アルブリジオ氏邸
地下室によって、家族専用のプライベート空間と
お客様を招くパブリック空間の区別ができました。

今回訪れたのは、ダグ・アルブリジオさん・ペギーさんご夫妻と、ペルーからの養女、シエラちゃんの3人。アメリカ・シアトル中心部のグリーン湖の近くの閑静な住宅地の1929年建築のクラシックなお家にお住まい。ダグさんは元電気工。今はリタイヤして、お持ちの貸家を管理する毎日。奥さんのペギーさんは退役軍人用病院の看護婦さん。「今、ローンを払っているのは私よ。一家の大黒柱。」と冗談を飛ばしながらも、仲の良いご夫婦だ。シエラちゃんは約10年前にアメリカに移ってきて今は13歳。サッカーやバスケ、ソフトボール、スキーを愛する活発なスポーツ少女だ。
この家は19年ほど前に買ったもの。家の中もリビングがクラシックなスタイルで気に入っていたが、1階のキッチンは60年代か70年代に多少リフォームを行っており、その当時の流行のスタイルで、オレンジの花柄の床だったり、キャビネットが粗い木目調だったりして、何だか古臭い感じだったという。地下は暗い倉庫と洗濯機のある部屋がある程度で、コンクリートの床がほどんどで一部は土がでているところもあったという。また広さ的にも、ベッドルームが二つとバスルームが一つだけ。親戚が泊まる際には、シエラちゃんは自分の部屋を親戚に提供し、両親のベッドルームで3人でベッドに入ったという。「それにTVはリビングルームにあったし、ゲストをお招きする部屋と、家族の団欒の部屋の境が全く無かったね。」とダグさんは思い出す。ペギーさんにとってはキッチンの狭さと古臭さに我慢できなかったという。「私は、料理が趣味のようなところがあるので、カウンタースペースやスパイスのための棚が少ないのは、とても不便だったわ」。ペギーさんの当時の不満が伝わってくる。
 
そこで、数年前から地下とキッチンのリフォームを計画する。知人の建築家、トム・ナイチャイ氏に頼み、家族の夢と希望を伝えた。まず、キッチンはカウンターを広く取り、収納スペースを十分に、そして家全体の雰囲気にあったクラシックなスタイルにしたい。地下は、シエラちゃんの部屋、TVを置くファミリールーム、そして2つめのバスルームが欲しい。ナイチャイ氏は、キッチンの壁を外へ約50センチ動かし、そこに新しいカウンターとキャビネットを入れることと、地下はやはり約50センチ地下を堀り、さらに家の周りも掘って、大きな窓を入れることを提案。地下のスペースでも光を取り込んで明るくすることを考えた。
家族は家に住んだまま作業を行ったので、まずはダイニングルームに仮設の流し台を作り、そこにキャンプ用のグリルを用意し、冷蔵庫を設置した。工事は12ヶ月かかったので、キャンプをしているような生活をしたという。
だが、その辛抱の甲斐あって、リフォームは大成功。「初めてプラスチックのカバーを取ってリフォームの結果を見たとき、やってよかったと心の底から思ったわ」とペギーさん。自分の居場所としてのキッチンが本当に気に入っている。「特に真ん中にアイランドとして座るスペースを作って家族で集まれるし、ダイニングルームへのドアも取り去ってオープンキッチンスタイルにしたので、リビングまで見渡せて、料理をしながらコミュニケーションが取れるのがいいわ」と家族が語り合えるスペースになったことを強調する。
ダグさんは地下がお気に入りだ。「地下でありながら、8フィート(2.4m)の天井の高さになり本当の広さより広く感じられる。また、大きな窓が入ったので地下とは思えないほどの明るさにできた。それに床暖房を入れたので、冬は暖かく、夏は涼しいという完璧なスペースができあがったと思う。トムに本当に感謝している。」お二人の嬉しさがよく伝わってくる。
だが、実は一番嬉しかったのはシエラちゃんじゃないかと思える。はにかみながらも、「私の誕生パーティには、ファミリールームにマットレスを敷いて、友達とパジャマでDVDを夜通し見たの。騒いでも大丈夫だし、楽しかった。」と微笑んでみせる。ティーンになって、多少プライバシーを考え始める時期。親と壁を挟んでという感じから、多少自立したスペースを持てたことの嬉しさが言外に伝わってくる。
最後にダグさんが家族を代表するかのように語ってくれた。
「リビングルームというお客さんを招くパブリックなスペースでは無くて、ファミリールームという本当に家族団欒のスペースで、3人で誰の気兼ねもなく、週末ビデオを見るのが何よりの楽しみ。最近はアテネオリンピックを見て夜遅くまで起きていることが多いので、ちょっと朝寝坊だけどね」。家族思いのお父さんという感じが、よく伝わってくる言葉だった。
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